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ひと手間Weblog

玄人はだしの逸品から箸にも棒にも掛からぬ駄作と+α を色々とご紹介

ホンダCBX125Fのレストア ― エンジン周り編-①

CBX125FデュアルキャブCBX125Fは単気筒にもかかわらず、デュアルキャブとデュアルエキゾーストを搭載している。さらにDOHC4バルブシステムは、半球形燃焼室実現のため放射状配置となっている。1984年当時、2ストパワーに比肩するために開発されたRFVC*1エンジンとして世に送り出された、いかにもホンダらしいバイクではないだろうか。ところが、発売後30有余年経過した今、その性能を維持するのは、かなり難しい状況となってしまったのだ……。

プライマリーキャブレターを分解 title=
プライマリーキャブレターを分解したところ。こちらがメインのキャブレターとなり、パイロットジェット、チョークレバーなどが装備される。

エンジン関係で始めにレストアに取り組んだのは、キャブレターのオーバーホールからだ。そのためには、キャブレターを取り外すのだが、このCBX125Fのキャブレターを取り外すのは、思いのほか大変な作業だった。ゴム製インシュレーターとキャブレターを固定している金具のネジを緩め、エアクリーナーボックス側の金具のネジも緩めるまではすんなりと行えた。金具を移動させてキャブレターを外そうとしたら、前後方向に余裕が全くなく無理だった。エアクリーナー側のダクトがボンドで固定されており、エアクリーナー側へ押し込むことができないのだ。さらにダクトが伸縮性のあまりない素材なので、縮めることもできなかった。

セカンダリーキャブレターを分解
セカンダリーキャブレターを分解したところ。こちらはメインジェット、エアスクリューなどが主に装備される。双方のキャブ内部は、サビや汚れが溜まっていることはなく、フロートの色付きを除き意外と奇麗だった。

そこで、エアクリーナーボックスをマウントしているボルトをすべて外し、エアクリーナーボックス自体を外すことにした。ところが、このエアクリーナーボックスが巨大で、左右フレームの間からは外せないのだ。後方へは2センチほど動かせたので、強引ではあったのだが、無理やりキャブレターを引っ張り出すようにして取り出した。このインテークマニホールドが、トラブルの温床になっているのも頷けた。アルミ製インテークマニホールドとゴム製インシュレーターが一体型となっているため、熱や経年変化で、アルミとゴム部分の剥離が構造上しやすいようなのだ。強引にキャブレターを取り、インシュレーターのゴムが剥離すれば、二次エア―を吸ってエンジン不調となる。

分解掃除が終了して各パーツを組み込んだところ
ヤマハのキャブレタークリーナー泡タイプで分解掃除が終わり、各パーツを組み込んだところ。上がセカンダリーで、下がプライマリーキャブレターだ。今回はパーツ類が奇麗だったので、分解掃除だけで済みそうだ。しかし、この後に悲劇が……。

販売から既に30年以上経過しているので、ゴム部分が硬化や劣化してくるのはやむを得ない。この新品パーツが手に入らず、バイクを手放したライダーもいるようだ。CBX125Fの販売台数があまり多くなかったことも、この窮状を招いたのかもしれない。単気筒でエキゾーストパイプの2本出しは、ホンダのバイクでよく目にする。しかし、小排気量の単気筒でデュアルキャブレターというのは、あまりないのではないだろうか。それこそ不世出のバイクだと思うが、性能追及のための設計が仇となり、ほんとに整備性が悪い。さらに、キャブセッティングが難しく「プッスン病*2」なるものが存在するらしい。どうやら、とんでもないバイクを購入してしまったようだ。

不具合修復(キャブレター)

折れて補修されていたオーバーフロート管
以前のオーナーの手により、修復されていたオーバーフロート管。真鍮パイプの上にあるグレーのものが、補修用ボンドの欠片だ。この後、フロートチャンバー内に残った補修用ボンドも削っておいた。

兎にも角にも、プライマリーとセカンダリーキャブレターをなんとか取り外せた。まずは、プライマリー側からパラしていく。前オーナーがガソリンをほぼ抜いていてくれたので、腐ったガソリン臭はなく助かった。バラバラにしたところで、ヤマハのヤマルーブスーパーキャブレタークリーナー泡タイプで、溶剤漬けにしていく。セカンダリーキャブもバラシて、同じようにキャブクリーナーの溶剤漬けに。元々ひどく汚れてはいなかったので、数分で漬け込みを終了。パーツクリーナーで汚れを落としながら各パーツを組み上げていく。そんな中、プライマリーキャブのオーバーフロート管に緑青が噴いていたので、磨こうとした瞬間に事件は起こった。なんと、真鍮製オーバーフロート管が根元からポッキリと折れてしまったのだ。

補修用真鍮パイプの外形の計測
M氏が保有する数ある極細真鍮パイプから、折れた真鍮製オーバーフロート管の内径に合う真鍮パイプをあたっているところ。ピッタリな真鍮パイプが見つかった。

「やってもうた」である。だが、折れた箇所を見ると、ボンドで修復した痕があった。恐らくガソリンで侵されないので、エポキシボンドでの補修だと思う。ひとまず冷静になり、対策を考えた。真鍮パイプなのでハンダ付けの修正が一番だ。ただし、切り口通しのハンダ付けでは弱い。そこで、極薄の真鍮パイプを折れた真鍮パイプに入れることを思いついた。そこで旧友のM氏に相談をしてみた。M氏とは、鉄道模型のプロスクラッチビルダーで、真鍮細工はお手の物だ。それゆえ真鍮パイプは、色々な径を持っているはずだ。電話で説明をし、折れた真鍮パイプに入れられそうな極細真鍮パイプがあるという。話しはトントン拍子に進み、2月末頃に遊びがてらお邪魔させていただけることになった。

 

あざやかなプロのテクニック

真鍮パイプに施したハンダメッキ
M氏の超絶テクニックのひとつ、極薄ハンダメッキ。ピンバイスで真鍮パイプを加えて、全周囲のハンダメッキを行った。100ワットのハンダごてには、自作した鍛造のこて先が付けられている。プロが使用する道具や工具がカッコ良いのは何故なのだろう。

当初は真鍮パイプを入手するだけの予定だったが、M氏のご厚意で補修をしていただけることになった。修復用の真鍮パイプを手際良く糸ノコで2つ切り出していく。1つは予備なのだそうだ。M氏愛用の糸ノコ刃は、スイスのバローベ製。切れ味は抜群だが、今は入手難なのだそうだ。真鍮パイプを切り出した刃の番手は#8/0、一般に入手できる中で極細目とのこと。その刃を見せてもらうと、老いた眼には刃の向きが全く分からないほど細かかった。修復素材ができたので、次はハンダ付けだ。水とフラックス、ハンダとハンダごてが用意された。自作した鍛造のコテ先が温まったころ合いを見て、修復用真鍮パイプにごく薄くハンダメッキを行った。それを折れた真鍮パイプと合体。フロートチャンバー内に残った真鍮パイプにハンダ付けするのだ。

オーバーフロート管の補修が終了
修復が終わったオーバーフロート管。外観からはほぼ分からない。左にある真鍮パイプは、予備に糸ノコで切断したもの。糸ノコの刃は、スイスのバローベ製で、番手が#8/0という極細の刃だった。

ところが、M氏が首を捻る。真鍮ハンダ付けのフラックスは、塩化亜鉛の薄め液を利用する。そのフラックスでも上手く流れないという。100ワットのハンダごてを使用しているので、熱量的には全く問題がない。M氏曰く、アルミパーツの若干奥まったところに折れた真鍮パイプがあるため、ハンダごての熱でアルミの酸化被膜ができてしまい、上手くハンダが流れないのだろうとのことだった。まぁそこはプロ、原因が分かれば対処できるそうで、見事に折れたパイプがつながった。オーバーフロート管の中にはハンダが流れ出た様子はなく、問題なく機能している。M氏が極細リーマーで、真鍮パイプ内を揉んでくれたようだ。これでキャブレターの分解掃除が完了する。いゃー助かった。持つべきものは友である。

不定期更新 ─

*1:Radial Four Valve Combustion Chamber:放射状4バルブ方式燃焼室

*2:急なアクセル全開でエンジンが停止する